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2019/12/25古都飛鳥保存財団情報「分岐点」 第8期飛鳥応援大使 梅前佐紀子 

分岐点

             第8期飛鳥応援大使 梅前佐紀子

 

 人間、五十年以上生きてまいりますと、「ああ、あれが人生のターニングポイントだったのだな」と来し方を

振り返り思うことがよくあります。仕事選びのきっかけとなった恩師の言葉や、夫と出会う機会を作ってくれた

友の誘いなど、私に限らず誰しもが、そういった「運命の分岐点」をお持ちのことと思います。人生とはある

意味、数多く訪れるそうした分岐点の積み重ねの結果なのかもしれません。

 

 飛鳥応援大使に関していえば、私の「分岐点」は、ある日の夕刊に載っていた小さな広告でした。

 それは、薄墨色の森を背景に「『大和文化会』会員募集」と書かれた広告で、年会費を払えば年に十回行われる

講演会を聴講できるとのこと、古代史に関する講演会は大好きでよく出かけておりましたが、情報入手が遅く

いつも申込みの時期を逸してしまう私は、これ幸いと早速それに申し込みました。

 講演会は四月から始まりました。一回目の講師は猪熊兼勝先生で、天武の皇子たちの古墳が北斗七星の形に

並んでいるという、猪熊先生らしいロマンティックなお話でした。

 講演の帰り道、通りかかった公園の桜があまりに見事だったので、私はコンビニでコーヒーとドーナツを買い、

いただいた資料を公園のベンチに座って読むことにしました。

 講演のレジュメや催し物の案内、チラシなどの中に、パンフレットにしては妙に立派な小冊子が入っていました。

タイトルは「明日香風」。開いてみると、古代史に関する大変専門的な内容の、40ページ以上もある小冊子で、

知識の薄い私には半分も理解できませんでしたが、それもなんだか嬉しくて、散り敷く桜の花びらの中、

人なつこい雀にドーナツのかけらを時折投げてやりながら、時間を忘れて読みふけりました。

 

 古代史に興味を持ち、それを主題とした小説まで書いておきながら、そのときまで私はうかつにも「明日香風」

の存在を知りませんでした。あらためて表紙を見ると「季刊」とあります。よし、これからこれを購読しよう、

できればバックナンバーも読んでみたい、と思いつつ読み進めた私の手は、ページも残り少なくなったところで

止まりました。

 「さようなら『明日香風』」とあり、ようやくみつけたこの雑誌は、この号で休刊になるとのことでした。

今日講演した猪熊先生は創刊からこの雑誌に関わっておられたらしく、定価四百円のこの雑誌が、千人にもなる

今回の講演会出席者全員に配られたのは、この雑誌を一人でも多くの人に読んでもらいたいという先生の思いに

よるもののようでした。

 せっかく素敵な雑誌をみつけたのに、と、ちょっと茫然となりました。そんな私の目に飛び込んできたのが

最後のページに載っていた、「第8期飛鳥応援大使募集」のお知らせだったのです。これもご縁と応募して、

めでたく採用となったのはご存知の通りです。

 

 そうして私は今、応援大使となったことを通じて出会った方々とともに、それまで想像できなかったほど深く

飛鳥と関わっています。あのとき、新聞に大和文化会募集の広告を見つけなかったら、「明日香風」を手にする

こともなく、私は今も、遥か遠い飛鳥に手の届かない片思いを続けていたに違いありません。

 

 この文章を書くにあたり、そのとき手にした「明日香風」を久しぶりに開いてみました。すると、最後のページ

に、薄茶色に変色した桜の花びらが一枚、はさまっていることに気がつきました。あのとき、あの公園に

降るように舞っていた桜。この花びらは、あれからずっと、私の奮闘を見守っていてくれていたのかもしれません。

 

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